Kamo mini
 1日目その2: コウモリの飛翔を見るぞ!
 カールスバッド洞穴→ホワイツシティ (1998/7/3その2)
←前に戻る   次に進む→   戻る→


 ビジターセンターの中にあるエレベータ乗り場から地下に降りる。エレベータを待っている間、 タバコや食べ物はダメとか、石に触ってはダメというような、鍾乳洞に入る心得を聞く。 鍾乳洞の中で観光客が鍾乳石に触るのを防止するためか、「ここで自由に触ってください。 洞穴の中の鍾乳石の手触りもこれと全く同じです」と書いた鍾乳石の見本が展示してあった。 エレベータが到着して、いよいよ地下に降りる。

 エレベータの中にもレンジャーさんが乗っていて、いろいろ説明してくれる。何故かよくわからないが エレベータの中では照明が消されることになっているようだ。ほどなく地下に到着、エレベータを降りる。 広い空間があり、もう今の時間では店じまいをしていたが軽食レストランや土産物屋さん、水洗トイレもある。 ひんやりしていて、ちょっと寒い感じ。洞窟内の温度は、一年を通して、56°F (13°C)になっているようだ。 ここの深さは地上から755フィート(230m)、東京の超高層ビルくらいの高さのエレベータを降りてきたことになる。 このエレベータは1931年(昭和6年)に完成したという(その後付け替えはあったようだ)。 アメリカの近代化が早かったことを痛感する。

Big Room
 ビッグルーム・ルートというコースを周るため、矢印に従って進むと、すぐに鍾乳洞が始まった。 おお、大きい。すごい。何とも異様。奇妙な形をした鍾乳石が上から下から、ニョキニョキと伸びている。

 全長は1マイル(約1.6km)、1時間くらいのコースだ。もちろん照明はあり、道もきれいに整備され、 ところどころに休憩できる椅子も置いてあって、歩きやすいコースになっている。 掲示板の表示はすべて英語とスペイン語の併記になっており、ニューメキシコという土地柄を感じさせる。

 帰りのエレベータを待つ人の列が長く続いているのが見える。近くでレンジャーが、必ず全員乗って帰れますと 説明していたので、その点は心配する必要はなさそうだが、この後コウモリの飛翔を見るのによい席を確保するためには、 早めに行っておく必要がある。途中近道(shortcut)があり、そこを通れば何十分か早く帰れそうだったので少し悩んだが、 その先の鍾乳洞を全く見ないというのももったいないということで、そのままコースを急いで歩くことにする。

 このビッグルームの面積は14エーカー(56,658平方メートル)になるという。地球の歩き方によると、 「ビッグルームは文字通り大きな空間でサッカー場が14面入る」ということだったので、サッカー場が14面並んだような、 地面の平らな、だだっ広い巨大な体育館のようなものを想像していたが、目の前にあるのは、あくまで洞窟だ。 大きな洞窟が長く続いていて、その総延長面積がサッカー場14面の面積に相当するということになる。

 Giant Dome, Temple of the Sun, Totem Pole, Bottomless Pit, Rock of Ages, Painted Grottoというように、 いろいろな名前の付いた、奇妙な形をした大きな鍾乳石が次々に現れる。不思議な空間だ。 中でもMirror Lakeというきれいに澄んでいる池では、掲示板にMirror Lakeという文字が逆さに書かれていて、 水面に映る文字を見るようになっているのが面白かった。

Giant Column
 6時頃にエレベータ乗り場に着いた頃は、先程の長い列がウソのように全くなくなっていて、すぐにエレベータに 乗ることができた。

 一気に755フィートをエレベータで上って、ビジターセンターに戻る。ビジターセンターからコウモリの飛翔を 見るところ(Bad Flight Amphitheater = 野外劇場)へ歩いて向かう。6時20分頃に野外劇場に到着。

 この野外劇場に座って、もうしばらくしたら洞窟の入り口から出てくるコウモリを待つ。見事にポッカリと開いた 洞窟の入り口には中へ続く道が続いていて、ナチュラル・エントランス(Natural Entrance)となっている。 それも3時半以降(夏期)は通れなくなっている。今の時間は入り口のあたりにはツバメが飛んでいる。 洞窟の脇にはリスのような動物がいて、岩の上をチョロチョロしている。

 既に20〜30人くらいの人は来ていたが、空席もたくさんあり、まずまずよい時間に到着できたと一安心。 ところがここで問題が発生する。地球の歩き方には「見やすいのは前の方の列の『右側』。人気があるので、 いい位置をキープしたいなら早めに。帰りは足元も真っ暗なので、懐中電灯を持っていると便利」とあった。 早めに来たのはよかったのだが、いったい「右」とはどちらか、悩むことになる。ビジターセンターから歩いてきた 方向から見て右側、洞窟の入り口を舞台にたとえると舞台に向かって右側、つまり上手側と解釈するのが自然だろうと いうことで、上手側、洞窟に通じる通路側に座る。だが、ほとんどの人が下手側、小高い方の席に座っている。 最初は「ああみんな知らないんだなぁ、地球の歩き方を見ていてよかった」と思っていたが、 しばらくあたりを歩いてみて、洞窟の入り口からコウモリが出てきたらどう見えるか、 どちらの方向に飛んで行くのかとか、あれこれ考え始めると、どうやら下手側に座る方が正解のような気がしてきた。 上手側に座る人があまりに少ないので、思い切って下手側、小高い方の席に移動する。

 周りではスペイン語をしゃべる人も多い。子供が走り回る中、ぼくは横になってしばらく睡眠をとる。 7時半頃目を覚ますとかなりたくさんの人が集まってきて、空席もなくなってきている。 座席の最後方、一番高いところにはレンジャーの人達がカメラをセットしている。日本人の姿も見られるが、 多くの人が上手側に集まっている。しっかり懐中電灯も持ってきている人もいて、おそらく地球の歩き方を 見て来たんだろうなと思う。

Bad Flight Amphitheater

 ビジターセンターに書いてあった時刻7時45分というのは、コウモリが飛ぶ時間ではなく、その前にレンジャーが 解説を始める時刻だったようだ。時間通りレンジャーのお兄さんがやってきて、マイクを使って解説を始めた。

 自分も子供の頃はコウモリをいじめて遊んでいたという話に始まり、その後カールスバッドで働くようになった経緯、 コウモリにはいい印象を持っている人が少ないが、本当は植物にとっても人間にとっても有益な動物であること、 カールスバッド国立公園ではコウモリが有益な動物だということをみんなに知ってもらおうと努力しているという ような話だった。かつて殺虫剤DDTの影響で、害虫だけではなくコウモリも死んでしまうということがわかった時、 殺虫剤メーカーが「コウモリは悪い動物だ」という宣伝をして、みんなに間違った印象を植え付けたという話が 印象に残った。

 アメリカではどこの国立公園に行っても思うことだが、レンジャーの人は心の底から自然が好き、動物が好きで、 話を聞いているとその気持ちがこちらにも伝わってくる。またいつも明るく笑顔で質問に答えてくれたり、 観光のアドバイスをしてくれる。不快な思いをさせられたことは全くなく、本当に見事なものだ。 アメリカの旅行が楽しいのは、そういうレンジャーの人々の存在によるところが大きいと思う。

 そのうち暗くなって、ツバメの動きも止まり、レンジャーのお兄さんの話も終わった8時15分頃、 いよいよコウモリの登場だ。無数のコウモリが洞窟から出てきた。反時計周りに旋回して入り口の前で少し渦を作ってから、 次々に空へ向かって飛んで行く。

 コウモリを驚かさないようにするため、お兄さんがあれだけ何度も何度もカメラのフラッシュを焚くなと 言っていたのに、まだフラッシュを焚くやつがいる。バカモノ!

 まだ7月で、本格的な季節(8月9月が最盛期という)ではないためか、空を埋め尽くすとまではいかなかったが、 なかなか見応えのあるものだった。コウモリが飛び去って行く姿が良く見えたという点で、やはり下手側に 座ったのは正解だったと思う。

 帰りがけ、レンジャーのお兄さんに「コウモリは何故旋回するのか」と質問したところ、洞窟から出てくるのに真上に 上昇するわけにもいかないので旋回して距離をかせぐのだと教えてくれた。急な坂道を自転車で登る時、 蛇行して登れば楽だというのと同じというわけだ。なるほど。

 帰りはかなり暗くなっていたが、駐車場までは懐中電灯がなくても何とか歩ける程度だ。

 本日の宿泊先ホワイツシティのベストウェスタンに9時過ぎに到着。一泊$79.00。 部屋に荷物を置いてちょっとゆっくりしてから、フロントで教えられたレストラン(Velvet Garter Restaurant)に行くが、 ちょうど店を閉めたところだと言う。そう思えばフロントの人が9時半に閉店と言ってたような気もするが、油断していた。 他にレストランがあるような町でもなく、フロントに戻ってどうすればよいか相談したところ、車で20分くらいの街 (Carlesbad)に行くか、そのレストランでも持ち帰りで簡単なメニューなら作ってくれるということだ。 持ち帰りでホットドッグとハンバーガーを作ってもらい、デリでビールを買って部屋に戻る。

 部屋でわびしく夕食を食べて、就寝。



←前に戻る   次に進む→   戻る→