2日目:
苔とバンビ。オリンピック国立公園
フォークス→オリンピック国立公園→キングストン→エベレット (1998/8/10)
宿を8時頃出発する。モーテルの隣のコーヒーショップで朝食をとる。出てきたホットケースが超特大でびっくり。
フライパンのような大きさで、厚みもあるホットケーキが2枚出てきて、とても最後まで食べられない。飽食の国だなぁ。
こういうのを喜んで食べる人がいるのかなぁ。
まずは、苔で有名なホウ・レインフォレストへ向かう。101号を右に曲がった後、ホウ・レインフォレストまでの道が、
「地球の歩き方」の地図では未舗装道路になっているので、快適に走れるか少し心配していたが、
実際は舗装道路になっていた。
ゴールデンイーグルパスを見せてオリンピック国立公園のゲートを通る。道路の両脇にある木々の上にも苔が付いている
のが目立つようになってきた。
ビジターセンターの駐車場に車を停める。ここには、手軽に歩けるトレイルとして、0.75マイル(1.2km)の
Hall of Mosses Trail=苔の殿堂トレイル=と、1.25マイル(2km)のSpruce Trail=トウヒ(えぞ松)トレイル=の
ふたつがある。ビジターセンターのレンジャーのお兄さんに聞いたところ、どちらもよく似ているが、苔が美しのは
Hall of Mosses Trail、途中で川辺を通り、運が良ければエルクなどの動物が見られるのがSpruce Trailと言う。
ガイドブックや絵葉書に載っているようなきれいな苔の写真はたいていHall of Mosses Trailの方だということだったので、
まずはそちらに向かうことにする。
このあたりは雨が非常に多いということで、傘とレインコートを用意してきたが、幸い今日は降っていない。
ここの年間降水量は140〜167インチ(3556〜4242mm)ということなので、日本で一番雨が多いとされている尾鷲や
屋久島とだいたい同じくらいのようだ。同じオリンピック国立公園の中でも、この太平洋側の地域に特に雨が多く、
ひとつ山を越えると、降水量は急に少なくなるという。
苔の森を歩く。流れる小川が美しい。木に生えている苔も美しい。なぜこのように、木の枝から垂れ下がっているような
形になるのだろうか。足元にはシダ類の植物が茂り、ちょっとしたジャングルのような雰囲気でもある。
ガイドツアーの一行と抜いたり抜かれたりしながら進む。あっという間に出発地点のビジターセンターに帰ってきた。
まだ余力があったので、Spruce Trailにも向かうことにする。
倒れた大きな木の切り株に、体長が10cmを越えるような、見たこともない大きさのナメクジがいる。
巨大なサルノコシカケのようなキノコも生えている。途中で道がよくわからなくなり、前を歩いている家族連れに、
川辺に出る道はこちらでよいのか尋ねたところ、「川辺には出ない」という返事。心配になりつつしばらく進むと、
行く手に川辺が見えた。さっき道を尋ねたおばさんがあわてて走って戻ってきて、「ごめんごめん、川に出たねー」
と謝ってくれた。律義なアメリカ人だ。
ホウ川の川岸では子供たちが石投げをして遊んでいる。日本人の観光客も多い。エルクが出てくる気配はあまりない。
またしばらく森の中のトレイルを歩き、ビジターセンターの駐車場に戻ってきた。
来た道を戻って、海岸沿いのクラロッチに向かうべく、車を走らせる。途中工事中のところもあり、
ダンプカーが何台も走っている。2時頃にクラロッチロッジに到着する。
クラロッチロッジのレストランで遅い昼食をとることにする。海が見える窓際の席に案内してもらう。丸太作りの、
雰囲気のよいレストランだ。海の眺めがたいへんよい。評判通り、クラムチャウダースープがおいしい。量も多い。
いっしょに頼んだシェフサラダもボリュームたっぷりで、スープ2つとサラダひとつ、それに付いてきたパンだけで
十分お腹いっぱいになる。隣でアメリカ人の親子が食事をしている。ちびっ子兄弟の、お兄ちゃんがコップを倒して
ワンワン泣いているそばで、赤ちゃんが天井を向いてバブバブ言っている。なんだか面白い。
その後、ロッジの隣に続くバンガローの間を通って、海への道を降りる。白っぽく朽ちた木が海岸に流れ着き、
砂浜に打ち上げられている。泳ぐには水が冷たそうだが、海に入ってはしゃいでいる子供たちもいる。
またアメリカではよく見る光景だが、イヌが浜辺を走り回っている。
休憩もそこそこに、出発する。フォークスで給油し、昨晩泊まったモーテルの前を通って、101号を
レイククレセントまで戻る。時間もないため、ちょっと残念だが、ソルダック・ホットスプリングスには
行かないことにする。
4時頃レイククレセントに到着。レイククレセントは、きれいな湖だ。山の緑に水の色が映える。
湖にはヨットも浮かんでいて、車にヨットを積み込んでいる人もいる。
メリーミアの滝は101号の右手、山側にあるので、トレイルの出発点もそちら側にあるはずと思い、山側ばかり気にして、
車で行ったり来たりしていたが、実は湖側にあるストームキング・インフォメーションステーションが出発点だったようだ。
駐車場に車を停めて、湖を左手に見ながら、インフォメーションステーションの前を通って、
メリーミアの滝へのトレイルを歩く。少し歩くと、101号の下のトンネルをくぐる。トンネルをくぐった後も、
101号からは見えにくいところにトレイルが続いている。なるほどこれでは山側ばかり見ていてもわからなかったはずだ。
川にかかる橋を渡って歩く。最後の方は急な坂道が続いている。坂道を登ると、目の前に、線は細いが高さのある
滝が現れた。その高さもさることながら、滝のまわりにも苔が生していて、美しい滝だ。記念撮影をして、引き返す。
オリンピック国立公園は、入園者の数では、グレートスモーキー・マウンテンズ、グランドキャニオン、ヨセミテに次いで、
アメリカの国立公園の中で第4番目だという。以下イエローストーン、ロッキーマウンテン、アカディア、グランドティトン、
ザイオン、マンモスケイブと続く。日本のガイドブックにも大きく取り上げられていることが多く、
ちょっと期待してきたのだが、どうも「普通」っぽい。日本の風景に似ているというか。
レイククレセントからポートエンジェルスへ向かう。途中「Port Angels International Airport」という表示が出ている。
片田舎の空港だが、カナダへの便が飛んでいるので「国際空港」ということになるのだろう。
夕方6時頃ポートエンジェルスのビジターセンターに到着。広場が人でごった返している。なんだなんだ。
陽気な生演奏も流れ、盛り上がっているぞ。駐車場に車を停めてビジターセンターに行ってみる。
どうやらオリンピック国立公園の60周年記念ということのようだ。ケーキやコーヒー、ジュースが無料で振る舞われており、
さっそくいただく。
60周年おめでとうと書いた立て看板があり、みんな寄せ書きをしている。中に「還暦おめでとう」といった日本語の
寄せ書きもいくつかあったが、それを見ていたアメリカ人のグループが、「ほら見て。日本語って、縦に書いたり、
横に書いたり、どっちでもいいみたいね」と言って珍しがっていた。なるほど。
今は夏時間である上に、ここは高緯度ということもあって、日がずいぶん長い。ビジターセンターの前の道路を山側に出て、
ハリケーンリッジへ向かう。頂上のハリケーンリッジまでは、約17マイル(27km)。国立公園のゲートを通り、
山道をぐんぐん登る。途中の展望台で一休み。遠く海の向こうにカナダがわずかに見える。
さらに上る。道沿いの高原植物がきれい。走っていると道の脇にシカを発見。幸い他に車もいないので、
停めてしばらく眺める。
出発してさらに走っていると、今度はシカが親子で道の脇をゆっくり歩いているのに出会う。
子ジカの方はディズニーのマンガに出てくるような、まさにこれぞバンビといった感じの模様だ。
車を停めて写真を撮っていると、バンビはお母さんの方に心細そうに鳴きながら走っていった。
ちょっと怖がらせてしまったかな。
頂上の駐車場に到着。標高は5230フィート(1594m)だという。駐車場の周りにもシカが何頭かいる。
夕陽を浴びたオリンピック国立公園の山並みが非常にきれい。その景色を眺めるかのようにたたずむシカもいる。
絵になる。ハリケーンリッジのビジターセンターの中に入る。既にビジターセンターの営業時間は終了していたが、
展示してある模型や写真は見ることができるようになっている。ビジターセンターの窓からも、
オリンピックの山々が美しい。
頂上付近を少し歩くことにする。手前のBig Meadow Loop Trail(0.25マイル)と、その先のCirque Rim Trail(0.5マイル)
を歩く。車椅子でも来られるようになっていることに感心する。トレイルには、野生動物の食料になる植物を食べては
いけないので、ペット(犬)を連れてきてはいけないことになっているようだ。
普段ならカナダの方が見えるそうだが、今日はカナダ側に霧が立ち込めていて、遠くが全く見えない。
それでも足元に咲いている高原植物がきれいだ。このあたりは冬にはスキー場になるらしく、リフトの降車場もある。
もう少し高いところに上ってみようと、High Ridge Trail(0.5マイル)も歩くことにする。やはり霧が濃くて、
カナダ側は何も見えなかった。トレイルには他の人がほとんどおらず、クマが出やしないかとちょっと不安になる。
駐車場へ戻ってきたときは、すでにあたりは薄暗くなっていた。ペコさんが近くの茂みの中を見ている。
行って見ると鳥が茂みの中をもぞもぞ歩いている。これはきっと雷鳥に違いないとペコさん大喜び。
本当に雷鳥だったのかな。
駐車場の片隅を一頭でのんびりと歩いている雄シカに別れを告げて、ハリケーンリッジを後にする。
ポートエンジェルスまで降りて来た頃には、かなり薄暗くなっていた。昨日来た道を戻るが、
ベインブリッジ島には向かわず、エドモントンへのフェリーに乗るためにキングストンに向かう。途中で日が暮れた。
キングストンに9時50分に到着。エドモントンまでは$8で、来るときに乗ったフェリーと違って同乗者ペコさんの分の
料金はとられなかった。下調べによるとフェリーは夜中の12時頃まであるということだったので、今日エベレットに予約
しているモーテルに行けなくなることはないだろうと思いつつ、港のゲートでお金を払う時にフェリーの出発時間を
聞いたところ、9時55分だという。ん、あと5分?見ると船は岩壁に到着していて、フェリー乗り場には車がいっぱい
停まっている。まさかあと5分したら船は無情にもわれわれの車を見捨てて出港してしまうってことか・・・
というような心配したのも杞憂に終わり、車の待ち行列に並んでしばらく待っていると、一気に車が動き出して順々に
船に乗り込んでいき、われわれの車も最後から2台目で乗り込むことができた。
船の中にあった時刻表を見ると、この9時55分の船の次は、11時10分だったようだ。もう何分か遅くなっていたら、
夜のキングストンで、ボッーと1時間くらい待たないといけなかったようだ。マクドナルドはあったみたいだけど。
船の中でホットドッグを買って、夕食を簡単に済ませる。あっという間に30分が過ぎ、対岸のエドモントンに到着。
来るときに乗ったフェリーと比べて確かに5分ほど乗船時間は短いのだが、それにしてもずいぶん早く感じる。
下船後は高速の5号に乗って北のエベレットへ向かう。交通量が多く、都会に戻ってきたという気がする。
エベレットの町が近づき、モーテルの住所に書いてあるブロードウェイという標識が出てきたのでそれに従い高速の5号を
降りるが、ブロードウェイと言ってもずいぶん寂しい田舎道だ。本当にこんなところにモーテルがあるのかと不安に
なってしばらく走っていると、急に道が開けて、市街地に入った。そのまままっすぐ走ると、左手に今日宿泊する
Seattle-Days Inn Everett Boeing/Naval Base(TEL 1-800-329-7466)が現れた。一泊$59。結構新しそうな建物だ。
到着したときはすでに11時を過ぎていたが、フロントではお姉ちゃんが入り口にカギをかけて番をしていた。
戸を叩いてカギをあけてもらって中に入り、宿泊の手続きをする。明日行くボーイング社までの道を聞くと、
地図をコピーして渡してくれた。
部屋に入ったところ、洗面所のまわりがすっからかん。タオルも石鹸も何も用意されておらず、慌ててフロントに
電話をかける。先程のお姉ちゃんがいろいろドサッと持ってきてくれた。こんなこともあるんだなぁと思いながら、就寝。