Kamo mini
 3日目: シアトルからアムトラック、エンパイアービルダーの旅
 エベレット→シアトル→アムトラック乗車 (1998/8/11)
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 今日はエベレットにある、ボーイング社の工場を見学する。モーテルのロビーにパンとコーヒーが用意されていたので、 それを軽く食べて出発。

 通勤の車の流れに乗って、ブロードウェイを南下、昨日来た方向に戻り、右に曲がって、高速の526号をしばらく行くと ボーイング社の工場が見えてきた。道の左右に飛行機の大きな格納庫がある。Visitorという表示が出てきたので、 それに従って高速を降り、そのままボーイング社のツアーセンターに到着。朝なのに日がさんさんと照っていて暑い。

 見学は8時30分からで、先着順ということなので早く行こうと思っていたが、到着したときには8時20分頃になっていた。 受付でおじさんが整理券を渡している。8時半と9時のツアーの分は既に終了しており、結局もらった整理券は10時からの分 だった。われわれがもらったすぐ後にはその分も終了し、おじさんはその次の11時からの分を渡し始めている。 無料ということもあってか、子供連れ客を中心に結構人気があるようだ。

 10時までの約1時間半、そのあたりで時間をつぶす。待合室にもおとといシアトルの航空博物館で見たような飛行機の歴史 などが紹介されている。また少し離れたプレハブの建物にある土産物屋さんでは、Tシャツや帽子、文具、おもちゃ、写真集 など、さまざまなボーインググッズが売っている。

Boeing
 10時になって、待合室の奥にあるホールに入ってビデオを見た後、簡単な説明を受けてツアー出発。 ボーイング社の理念を紹介するときに、「企業は株主のためにある」という言葉があり、アメリカらしさを感じる。 ホールを出て、横に止まっている観光バスに乗り込んで移動。

 前に見えている工場へ行くだけなので、歩いてもよさそうな気がしたが、建物が巨大で距離感がなくなっているようで、 実際にバスに乗ってみると思ったより時間がかかった。バスを降りて地下道のようなところを通り、大きな荷物用の エレベータに乗って工場の3階に上がる。

 エレベータを降りるとそこは工場の中2階。周りに広大な作業場が広がっていて、草色を蛍光色にしたような色の巨大な 機体がところ狭しと並んでいる。ガイドのおばさんがいろいろ説明してくれる。いろいろな工程があって、 機体は何日か毎に順に次の工程に送られていくという。塗装がまだなので見た目ではわからないが、 英国航空と中華航空の飛行機を組み立て中ということだ。

 見学通路をぐるっと一周した後、エレベータで戻る。来た時のバスに乗り、今度は高速道路の上の道を渡って、 塗装が終わった飛行機がたくさん並んでいるところを周る。世界中の飛行機の中に、ANAやJASの飛行機もある。 ジャンボジェット機の値段は、機種や詳細の仕様にもよる (Boeing飛行機の値段へのリンク)が、ざっと一機100ミリオンドル(百ん十億円)ぐらいして、注文時に1/3、 塗装前に1/3、納入時に残りの1/3を支払うそうだ。

 出発からちょうど1時間くらいでツアー終了。バスを降りる時、ボーイングの飛行機が写っている絵葉書の綴りをもらった。 これで無料というのはすごい。同じボーイング社主催なのに、何故こちらが無料で、シアトルの航空博物館が$8だったのか、 よくわからない。

 その後シアトルへ向かう。シアトルの町が近づくにつれ車が増え、広い高速道路も混雑してきた。スペースニードルの 高いタワーが右手に見えている。またおとといと同じ宇和島屋に車を停め、そのすぐ近くにある日本食の幸楽へ行く。 事前の情報でおいしいと聞いていたサバ定食とビーフ照り焼き定食を注文する。おいしい。たいへん満足。

 宇和島屋で買い物。グミを買う。レンタカーの中で聞くカセットテープを探すが、2階の紀伊国屋の隅で売っていたのは CDばかりで、カセットテープは一部の演歌しかなく、買うのをあきらめる。

 今日の夕方に乗るアムトラックの駅はここから目と鼻の先だが、レンタカーを返すには町中にある営業所まで行かなくては いけない。

 駐車場を出てガソリンを入れてから、シアトルの町中を走って、Hertzレンタカーの営業所で車を返却する。 マイル数を申告すると、お姉さんが変ねぇと言いながら車まで確認しに行った。空港で借りたときに店の人が記録した マイル数に間違いがあったようだ。でもとにかく無事に車を返却することができた。

 町中のバスは無料だということなので、バスが来れば乗ろうと思っていたのだが、なかなか来ないので、重い荷物を 持って暑い中、仕方なく歩いて移動する。Pine Streetを海に向かう。ノードストロームの百貨店が目立っている。 人手が多く、にぎやかだ。足を組んで屋上に座っている巨大な人形(アドバルーン?)がある。

Pike Place Market
 1st Avenyuを越え、海岸に近いにぎやかな一角までやってきた。Pike Place Marketというそうだ。 新鮮な魚介を売っている大きなマーケットをはじめ、中華料理のお惣菜、花、みやげ物、雑貨を売る店、カフェなどがあり、 大きな商店街になっている。「海に面した景色のいい公園の芝生で一休み・・・」というプランを思い描いていたのだが、 海岸線は道路が走っており、その上には高速道路もあり、コンクリートばかりが目立って、くつろげる公園があるような 感じではない。マーケットの周りをウロウロしたあと、喫茶店Campagneで休憩。コーヒーを飲む。

 隣の席に座った家族連れが、運ばれた料理が気に入らなかったのか間違っていたのか、女の子の料理を取り替えて もらっている。

 アメリカのレストランでは、たいていウェイター・ウェイトレスの愛想はよく、黙っていてもコーヒーや紅茶のおかわりを 持ってきてくれるし、何か質問しても丁寧に答えてくれる。料理を食べ終わるか終わらないかの内にお皿を下げてくれることも よくある。日本でそういうことがあると「早く出て行け」という意味なのかと勘繰ってしまうが、アメリカでは純粋に、 要らないものを片付けてきれいにしてくれているのだということが、気持ちから伝わってくる。またさらには料理の味に 気に入らないことがあると、言えば取り替えてくれるということだ(自分ではやったことがないが・・・)。 これは、アメリカ人がもともとフレンドリーな性格だからとも言えなくはないだろうが、チップをもらわなくてはいけないから そうするのだ、というのが一般に言われる理由だ。あるいは、本当にお客さんを大切にしないと、アメリカの合理的な 競争社会の中でお客さんにそっぽを向かれたらレストランとしてやっていけないという危機感がそうさせているのではないか とも思う。いずれにせよ、「食べさせてやっている」という態度のオヤジがいるような日本の料理屋には、アメリカの レストランのサービスを是非とも見習ってほしいところだ。

 それはさておき、その料理を取り替えてもらった女の子は、どうもテーブルに伏して泣いているようだ。 周りの家族は黙々と食べている。うーん。何があったのかな。

Waterfront Street Car
 このあたりからアムトラックの駅までは、2両編成の小さなチンチン電車 (Waterfront Street Carへのリンク)が 走っているということなので、それに乗ることにする。

 マーケットの中から階段とエレベータで海沿いの道まで出て、水族館の前にあるPike Street Stationで電車を待つ。 逆方向の電車を一本見送ったあと、しばらくするとその電車が折り返してやってきた。乗る時に車掌さんにひとり$1払う。 中には留学生と思われる日本人も乗っていた。

 終点のJackson Street Stationからは、信号を渡るとアムトラックの駅はすぐそばだ。橋の下の駅に停車している列車の ディーゼルエンジンの勢いよい音が聞こえる。少し歩いてアムトラックの駅に到着。古ぼけた入り口から中に入り、 階段を降りて駅の構内へ出る。

 アムトラックは、シアトルからグレイシャーパークまで、寝台車(Superliner Standard Bedroom)利用でひとり$151.50。 事前にインターネットで予約をし、チケットが郵便で送られてきていたので、それを持って窓口に行ったが、手続きは 全て終わっていて特に何もすることはないらしい。寝台車の利用者は食事料金込みになっていること、 車内にはシャワーが付いていることを知る。待合室で出発を待つ。

 アムトラックでは飛行機と同じように荷物を預けることができるらしく、空港のBaggage Claimのようなこぶりの ターンテーブルがある。反対側には「アムトラック、無事故1年間」と派手な横断幕が飾ってある。 1年間無事故だったくらいで、そんなに喜んでいてよいのだろうか。待合室の片隅には、山に登るような格好をした 日本人の団体さんもいる。

 ビデオカメラであたりを撮影していたら、おじさんが何か話しながらこちらに歩いてきた。身なりが怪しいわけでもなく、 怖そうな顔をしているわけでもないのだが、かと言って冗談を言っているようでもなさそうだ。「わしを撮ってるんか」と いうようなことを言っているようだが、聞いた英語がよくわからないこともあり、対応に困っていると、 どこかに行ってしまった。なんかいやな感じ。

Empire Builder
 しばらくするうちに、ディーゼルの大音響を轟かせて列車が到着。大きな車両で、とても迫力がある。 駅にはプラットフォームというものがない。記念撮影をして、チケットを見せ、地面と同じ高さから列車に乗り込む。 冷房が効いていて涼しい。狭い階段を上り、2階へ行く。目指す寝台が見つかった。寝台は上下2段のベッドが ひと部屋になっていて、それが車両の左右に並んでいる。昼間は下のベッドは椅子になっていて、 上のベッドは壁際にたたんである。中に入った瞬間は狭いと感じたが、それでもふたりで入って座ってみると、 荷物を入れても窮屈というわけではなく、扉も閉まるため、結構落ち着く。快適快適。

 女性の乗務員さんがチケットの確認と、室内の設備の案内に来た後、4時50分、列車は定刻通り出発。 まずはシアトルの町の下に続くトンネルを通って北へ向かう。シアトルの町は、その昔大火災があったとき、 町全体を高くして、もとの町を地下に封じ込めたという。この線路も昔の町の中を走っているそうだ。

 隣の部屋越しに、進行方向左手に海が広がっているのを見ながら北へ向かう。エリオット湾が夕陽を浴びてとてもきれい。

 乗務員さんが食堂車の予約を取りに来た。7時に予約を入れる。夕食はなんでも好きなだけ食べられるようだ。 寝台車では、車両の隅にもポットが置いてあって、コーヒーとオレンジジュースを自由に飲めるようになっている。 寝台車の客はたいへん扱いがよいようだが、それも考えてみれば、同じ区間を飛行機で飛べば、半額以下の値段で、 しかもずっと早く行くことができるところを、あえて列車を選んでいるのだから、そのくらいのサービスがあっても 不思議ではない。

 ガイドブックが置いてあり、どこを何時頃通るとか、どういう景色が見られるかなど、詳しい説明が書いてある。 この列車はEmpire Builderと呼ばれていて、シアトル発シカゴ行き、終点シカゴまで2晩を過ごし、 3日目に到着することになっている。

 右手にはマウントレーニエの山が遠くに見える。列車はずいぶんゆっくり走っているように感じる。 風景がよく見えるようにということか、安全のことを考えてか。どの車両も高さが高いように思う。 乗っている車両も2階建てで、さらに2段ベッドにするだけの余裕がある。駅に着いたときに窓から外を見ると、地面に いる人がずいぶん下に見える。こんなに車両が高いと、トンネルなどの規格も日本とはずいぶんちがうのだろうなと思う。 途中で何度か貨物列車とすれ違ったが、貨車もみんな大きかった。

 予約の時間が来て、食堂車に行く。アメリカ人のご夫妻と相席になる。旦那さんの方はちょっと気難しそうで、 お互い黙々と食べる。それはよかったのだが、テーブル担当の男のウェイターが最悪。何があったのか、不機嫌そのもの。 食事の途中で、食べ終わった皿と一緒にフォークを持ち去られたので、代わりのフォークを持ってくるようにお願いしても いつまで経っても持ってこない、パンのお替りを頼んだところ、「好きなものを何でもいくらでも食べられますよ」 と憎たらしい表情で皮肉たっぷりに答え、まだメインディッシュが終わっていないうちに、デザートの注文を聞きに 来ただけならまだしも、注文したケーキを運んできて置いて行った。アメリカに来て以来、最も不快な夕食になった。

 景色もいいし、料理もまずまずおいしい、席に案内してくれたお姉さんをはじめ、他のウェイターさん達は普通の アメリカレストランと同じでみんな愛想がよさそうだったので、本当に残念な気がした。相席したご夫妻はいくらか チップを置いていったが、とてもチップを置こうという気にはなれず、そのまま帰ってきた。

 途中でWenatcheeというところで停車する。ワシントン州はりんごの生産量が全米一だそうだが、この町はりんご生産の 中心だそうだ。駅の周りの様子を見ていたところ、アメ車が多いことに気づく。サンノゼでは、アメ車よりも日本車の方が 多いのではないかと思うくらいトヨタやホンダが目立つが、田舎町にくると、アメ車一色になるようだ。

 列車は東へ進む。日も暮れ、シャワーに入りに行く。シャワールームは順番待ちになるのかと思ったが、 意外にそうでもなく、ほとんど誰も使っていないようだ。ちょっと狭いがしっかりお湯も出て、すっきりとする。

 あたりも真っ暗になり、こころなしか列車のスピードが上がったような気がする。椅子からベッドに組み立てて、 ぼくは上、ペコさんは下の段で就寝。



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