1日目その2:
夜空にドーン!
マウントラシュモア→カスター (1999/7/3その2)
右車線に車が停まって列が出来ている。おそらく駐車場へ続く列なんだろう。その後ろに並ぶ。少しずつ進んで、
10分ほどでマウントラシュモアの駐車場が見えてきた。白亜の建物が近代的で新しい。車の誘導をする係りのお兄さんも
テキパキしていて良い。入場料は車一台$8。窓口のお姉さんによると花火は9時20分からとのこと。
1階の駐車場に車を停めて、荷物を持って出かける。日差しが強い。
駐車場から広場の方に向かう。広場に向かう通路の両側にはアメリカ50州の旗が並び、その正面には4人の大統領の顔が
浮かんでいる。それにしても人が多い。日本では夏でも冬でも、休みのシーズンになればどこも人でいっぱいになると
いうイメージがあるが、それに対してアメリカの場合、外に出かけるのは夏と決まっているかのように、
夏と冬の違いが大きいように思う。夏の賑わいは格別だ。
右手にあるインフォメーションセンターに行く。そこで4人の大統領が、右から順にジョージ・ワシントン(初代)、
トーマス・ジェファーソン(3代)、セオドア・ルーズベルト(26代)、アブラハム・リンカーン(16代)だということを知る。
広場の一番奥、大統領の足元には舞台と大きな観客席があり、音楽の生演奏をやっている。
次々とノリのいい曲がかかって楽しい。
カリフォルニアとは気候が違うようで、蒸し暑い。地面に座って、今夜の花火見物の場所取りを始めている人も多い。
花火はどこで上がるのだろうか。レンジャーのおじさんに聞くと、このあたりならどこからでも良く見えるから早く
場所を取っておいた方がよいと言う。
取りあえずまだ場所が空いていそうなので、大統領の顔の下近くまで行くトレイルを歩くことにする。
坂道を少し下って行くと、作業小屋のような建物があり、その中でレンジャーさんがマウントラシュモアの説明をしていた。
山肌に梯子を垂らして、大統領を彫っていた当時の写真もある。それにしても山肌に顔を彫ろうなんてよく考えたものだ。
整備されたトレイルが、山の下まで続いている。寝不足がたたって、坂道はつらい。
大統領を見上げながら、休み休み歩く。トレイルの足元には小さなリスがチョロチョロしている。
大統領を真下から見上げる。なかなかの迫力だ。
しばらく歩いて観客席まで戻ってきた。4時半、これから花火までまだ5時間弱ほどあるが、
場所取りをしている人がさらに多くなってきたので、われわれも道端に座って待つことにする。
左手にはワシントン大統領が見える。椅子やシート、毛布を持って来て座っている人が多い。
準備がいいなぁ、多分常連さんなんだろう。
少し涼しくなってきたので、ペコさんを残して駐車場に上着を取りに戻ってから、
その足で食べ物を買いに行く。広場の階下、観客席の上方にビジターセンターがあるのを見つける。
きれいで新しい建物だ。食べ物売り場にはどこも長い列が続いている。それにしてもすごい人出だ。
30分ほど並んでアイスクリームとスムージーを買い、戻る。それらを食べた後、
今度はペコさんが夕食のホットドッグと水を買いに広場へ出かけて行った。眠気が襲ってきたので
座りながらウトウトする。椅子かシートか、何か欲しいところだ。
ペコさんが戻ってきた頃には、音楽もどんどん盛り上がって来た。知っている曲が多くてうれしい。
9時になってもまだ明るい。舞台を見下ろすとみんなノリノリ、舞台の前に出てきて踊っている人もたくさんいる。
さすが陽気なアメリカ人。いいぞ。
最高潮に達したころ、ひとりのお姉さんが出てきて、舞台で何やらアメリカの歴史の話を始めた。
あたりも薄暗くなって、お姉さんがアメリカを称える歌を高らかに歌った後、今度は全員起立して国歌斉唱。
アメリカ国民じゃないけど、なんだか愛国心が高まる気持ち。
国歌斉唱が終わると、ドーン、1発目の花火が上がった。大きい。大統領の山のすぐ裏側から上がっている。
あとは次から次へと、派手な花火が勢いよく上がる。音楽も演奏されて、花火にリズムと勢いを与える。
アメリカらしい陽気で明るい花火。すごい迫力だ。大統領の顔を照らすよう、山の下側からも火を噴くような
明かりが焚かれている。長い間待った甲斐があった。
旅行前、マウントラシュモアのことをインターネットで調べたとき、花火があると書いてあったので、
それならついでに見ちゃえと軽く考えていただけだったが、この花火は価値があった。
10時頃、大きな花火が連続で打ち上がって、にぎやかだった花火が終わる。日本と一緒で、いつ花火が終わったのか、
その時点でははっきりとわからないが、多分これで終わりだろう。
さあ駐車場へダッシュだ。もたもたしてたら駐車場が混んで出られなくなるぞ、ダッシュダッシュ。
アメリカ人はたいてい落ち着いていて、町の中でも走っている大人を見かけることはほとんどないが、
ここでもやはり走っているのはわれわれだけだ。みなさん花火の余韻を楽しむように、ぞろぞろと駐車場へ向かう。
その側を走り抜ける日本人ふたり。
駐車場に到着、急いで車を動かす。動いている車はまだわずか数台しかなく、走って来た甲斐があったと思いつつ
出口へ向かう。屋根のあるところから外へ出た途端、急に前のキャンピングカーが止まってしまった。
何分間たっても動かないので、ペコさんが外に降りて見に行くと、なんと、もうすでに先の方では渋滞が始まっていて
全然動いていないという。駐車場は一箇所だけではないので、他にも早い人がいっぱいいたということなのだろう。
エンジンを止めて待つ。後ろにも続々と車が並び始めた。一応早く来た甲斐はあったようだが、それにしても
いつになったら出られるのだろう。
外ではレンジャーのお姉さんが車を降りて待っている観光客と世間話をしている。雰囲気はいかにも友達同士だが、
話の内容からすると多分この人たちは他人同士。いつも思うことだが、アメリカ人はとても初対面とは思えないくらい
気さくに話をする。こういうところはうらやましい。知り合いのアメリカ人が道端で誰かと親しげに話をしているので、
「知り合いか?」と聞いても、「いや知らん人」ということが何度もあった。
うとうとしながら1時間ほど待っていると、ようやく車が動き出した。係員に誘導されて公園を出る。
よかった、何とか寝床に就けそうだ。山道をゆっくり下る長い車の列が続く。道の脇を歩いている人もいるが、
どこに行くのだろう。車を公園外のどこかに停めているのかな、それも賢明かもしれない。
244号を左折、16号に入る。工事中で舗装されていない道路を、カスターに向かう。街灯もない真っ暗な砂利道を、
砂煙を上げて走る車に付いて走る。出発してから1時間、ちょうど12時頃、今日の宿Best Western Buffalo Ridge Innに到着。
駐車場も一杯、満員のようだ。一泊$96.12。
到着が遅くなりすぎたかと思いつつ、フロントに行ってチェックインしようとすると、やはりもう業務は
終わっていたようで、フロントにいる人がドアの方を指差している。ドアには名前の書いた封筒がふたつ貼りつけてあり、
ひとつは自分の名前。中には部屋のキーが入っていた。これで無事泊まれそうだ。
でも、封筒がふたつしかなかったということは、われわれより後にこのBest Westernに来るのは一人(一組)だけって
ことになる。マウントラシュモアでは花火が終わった瞬間から走りに走って、あの群集の中からはかなり早い順番で
抜け出てきたと思うが、あの群集の中で、カスターまで来てBest Westernに泊まる人は自分たち以外にほとんど
いなかったってことか。近隣の町であれだけの人を収容する宿泊施設があるとも思えず、ちょっと不思議。
2階の部屋に入って、就寝。