3日目その2:
ムースに会いたい!
グランドティトン→イエローストーン→ボーズマン→サンノゼ (1998/5/25その2)
レンジャーのお姉さんに教えられた、ムースがよく現れるいう場所へ向かう。ティトン・パークロードを南へ向かい、
その名もムース・ビジターセンターがあるあたりから右の側道(Moose-Wilson Road)に入ったあたりが一番可能性が高い
ということである。
農道のような道に入る。あたりをキョロキョロしながらゆっくり進む。いない。
お姉さんは「5マイルも行って会えなかったら、もうあきらめて戻ってくる方がいいよ」と言っていた。
周りは湿地帯のような感じで、ムースがいそうな気配はあるのだが、その姿は見えない。
4マイルほど進んだところで、おっ、前方に車が2台停まっている。これは、これは、ムースか、と期待して近づく。
車の周りにムースの姿を探すが、見当たらない。また降りている人の様子を見ても、動物を見ている感じでもない。
あぁ、違った。
もうだめかなぁ。側道に入ってから5マイルを越えた。周りはまだ湿地帯っぽい感じが続いているので、
一応この景色が変わるまでは進むことにしよう、この道幅では折り返すこともできないし。
あきらめ気分で車を進めていたところ、左手の沼の中に、動くものが・・・。
おおおおーぉ。いた、いた。ムースだっ!ムースがいたっ。
あわてて車を停める。ペコさん車を飛び降りて、ダッシュ。車を広い場所に停めて、しばらくムースを眺める。
まだ春だからか、特徴的な大きな角はないが、頭が大きくて、独特の姿だ。
沼の中で、何を食べているのか、口を水の中に入れては、ザブザブ歩いている。
感激して見ている間に車が1台、2台、3台と停まって人が集まってきた。
背景には青い空、白い山、緑の草原、のどかだなぁ。人が集まってきても気にするでもなく、
ムースはもくもくと水の中の何かを食べている。15分くらい眺め、大満足。
さあ、出発だ。ムース、ありがとう、ここにいてくれて。元気でな。
時間が予想以上にかかっているので、先を急ぐ。来た道を元に戻り、ティトン・パークロードから、
ムース・ジャンクションを通り、ジャクソンホール・ハイウェイ(191号)を北へ。一路イエローストーンへ戻る。
夕方までにはイエローストーンを通過し、そのさらに北の、ボーズマン空港まで戻らなくてはいけない。
時間がなくなってきた。
ジャクソンホール・ハイウェイも、眺めのよい道路だ。左手にティトンの山並みが続いている。
途中いくつか展望台があったが通過し、景色が特にきれいそうなスネークリバー・オーバールックで、車を停める。
展望台からは、蛇行して流れるスネーク・リバー越しに、ティトンの山々が望める。
蛇行する川だからスネーク・リバー、そういう安易なネーミングも許せる気持ちになってしまうくらい素晴らしい眺望である。
ギザギザの山々が並ぶティトン山脈の中で一番高い山がグランドティトンで、その高さは4000mを越えているということだ。
また白く見えているものは、ずっと雪だと思って見ていたが、氷河のところもあるそうだ。
真夏にはこの白い部分がずいぶん減るようで、そういう写真も見たが、やはりティトンの山には白が似合う。
雪がたくさん残っている季節に来ることができて良かったと思った。
先を急ぐ。大草原では、ところどころにバイソンの群れがいて、草を食べている。
ティトン山脈を背に、たいへん絵になる光景だ。子バイソンもいる。
レンジャーのお姉さんから、ムースに会えるかもしれないと、地図に印をつけてもらったいくつかのポイントを
右手に見ながら進むが、一頭もいない。やっぱりあそこでムースに出会えたのは、本当に幸運だったと思う。
モーラン・ジャンクションに到着。ここにグランドティトン国立公園のゲートがあった。
国立公園の共通パス(ゴールデン・イーグルパス)を見せたところ、ID(運転免許証などの身分証明書)の提示も求められた。
なかなか厳しい。
オックスボー・ベンドの展望台で車を停める。ここはトレイルを歩くのもよいらしいが、もう今は時間がない。
遠くの方には、動物の群れのようなものがかすかに見える。もしかしたらあれはムースではないかと思うのだが、
よくわからない。少し景色を眺めた後、出発。
駐車場には、色鮮やかな、不思議な鳴き方をする小さな鳥たちが人の周りに群がっていた。
グランドティトンとも別れ、後はひたすらイエローストーンへ向けて走る。当初の予定ではもっと早く戻って来られると
思っていたのだが、意外に時間がかかってしまった。時間計算をする際、走行距離だけを考え過ぎた。
実際には、走っている時間よりも、車を停めて休憩したり、辺りを歩いたりしている時間の方がずっと長いということになる。
今後の教訓だ。
来た道を延々と戻る。イエローストーン国立公園の入り口を通り、グラントビレッジ、レイクヴィレッジを通過。
途中キャンピングカーのノロノロ運転にしびれを切らしつつ、午後4時過ぎ、マッドボルケーノに到着。
イエローストーンの見納めとして、急いでまわることにする。ボッコボッコ沸き立つ泥の池、マッドボルケーノは、
なんとも異様だ。竜の叫び声のような音がするという、ドラゴンマウス・スプリングという池もある。
温泉が湧き出すタイミングに合わせて、確かに何とも言いようのない、不気味な音がする。
前から歩いてきた家族連れの中にいるちびっこの腰には縄が付けられている。まるでイヌの散歩状態。
アメリカでは時々目にする光景だが、迷子にならないで良いかもしれない。
マッドボルケーノを文字通り駆け足で見学して、いよいよボーズマン空港に向けて出発。
昨日バイソンを見たヘイデンバレイ、キャニオンヴィレッジを通り、アッパーループの東を通って
マンモスホットスプリングへ。途中タワー滝の近くを通るが、寄る時間がとれず、残念ながら通過。
このあたりの道には穴がところどころあいており、あまりよい状態ではない。
イエローストーンの中のドライブコースではこのあたりからの眺望が良いと言われているようだが、
グランドティトンを見て来たあとでは、残念ながらどんな景色も、色褪せて見えてしまう。
午後6時頃、マンモスホットスプリングに到着。ガソリンを給油する。その間ペコさんはみやげもの屋で
父の日のプレゼントを買う。ガソリンスタンドのお姉さんにボーズマンまでの所要時間を聞いたところ、
普通に走って1時間15分から30分くらい、ということ。飛行機の出発時間は午後8時4分なので、
まあなんとか間に合いそうだ。トラブルがなければ。
おとといここに来た時には建物の周りにわがもの顔で座り込んでいた、マンモスホットスプリングのたくさんのシカが、
今は一頭もいなくなっている。いつでも動物に会えるわけではないということか。いろいろな動物に会えたのは、
幸運なことだったのだなと、しみじみと思う。
イエローストーンに別れを告げ、空港へ向けてひた走る。道の両側に牛や馬という普通の(?)動物を目にするようになり、
イエローストーン国立公園の外に出たことが感覚としてわかる。
道路は渋滞もなく、行く手を遮るようなキャンピングカーもなく、快調に走る。
でも、飛行機の出発時間が刻一刻と迫ってくる。来た道をひた走り、7時半頃ボーズマンに戻ってきた。
ところが、どこから空港へ行けばよいのか、表示が出ていない。
ハイウェイを一旦降りて、最寄りのガソリンスタンドで空港までの道を聞く。
本当はレンタカーを返す前にここでガソリンを満タンにしておきたいが、その余裕もなく、すぐに出発する。
飛行機が定刻より早く出発しているというようなことがなければよいのだが・・・。
ボーズマン空港には7時40分頃到着。急いでレンタカーを返す。レンタカーの返却はたいへん簡単で、
車の状態を調べることもなければ、ガソリンの残り量も自己申告だった。デルタ航空のカウンターに走る。
ところが、デルタ航空のカウンターには誰も人がいない。呼んでも出てこない。
これはもしや、既に出発してしまったのだろうか・・・。
大声で呼んでいたら、やっと中から人がでてきた。どうやらまだ飛行機は出発していなかったようだ。
よかった、間に合った。
8時4分発のデルタ航空5993便でボーズマンを出発。飛行機は50人乗り(Canadair Jet)でかなり小ぶり。
ソルトレイクシティで乗り継ぎになるため、手荷物の受け取りでトラブルがあっては困ると、
荷物はすべて機内に持ち込むつもりだったが、一番大きなバッグは飛行機に乗る時に、
乗務員さんに預けなくてはいけなくなってしまった。小さい飛行機だから大きく揺れるのかと思っていたが、
心配するほどでもなかった。スチュワーデスさんも一人で、たいへんそうだった。
ソルトレイクシティ到着午後9時5分。預けた荷物が、タラップを降りた地上に並べてあった。
ソルトレイクシティで飛行機を待つ間、夕食代わりにホットドッグを食べる。チリソースが辛い。
午後10時5分出発のデルタ航空1099便でサンノゼへ。239人乗り(Boeing 757)だったが、この飛行機でも、
荷物を乗務員さんに預けるように言われてしまった。時差の分、1時間時計を戻して、
午後10時55分にサンノゼに到着した。荷物は通常の場所(Bagging Claim)で受け取ることになり、
空港を出るのに少し時間がかかった。
イエローストーン国立公園は間欠泉、温泉プール、峡谷に滝、グランドティトン国立公園は山や湖の景観、
またどちらの公園でも自然の野生動物といったように、非常にみどころが多かった。わずか3日間だけとは思えない、
とても充実した旅行になった。
完
あとがき 旅行後出来上がった写真を見ても、自分達が見てきたシカが、エルクなのかミュール鹿なのか、
いまだによくわからない。