5日目:
なんじゃこれは!ブライスキャニオン!
モアブ・アーチーズ→キャピトルリーフ→ブライスキャニオン (1997/12/31)
朝早起きして、アーチーズの朝日を見に行く。さわやかな朝日を浴びて、バランスくん、今日も元気。
目の前には奇岩の数々、遠くには頂きに雪を抱いた峰々。なんとすばらしい景色。車で行けるところを一通り
みんなまわって、アーチーズに別れを告げた後、再びモーテルへ戻る。サービスの朝食(バイキング形式の簡単なもの、
パン、シリアル、フルーツ、ジュース、コーヒー、牛乳)を食べて、チェックアウト。
本当なら今からブライスキャニオンへ向かうところなのであるが、その前にひと仕事しなくてはいけないことになった。
前の日の夜、キャディラックの割れたガラスが気になって寝る前にレンタカーの契約書を読んでいたところ、
「車両保険を適用するには、トラブルが起こったことを直ちに当局に知らせないといけない」という一文を発見。
それは大変だということで、当局に出頭することにしたのだ。
当局とは何ぞや、まあポリスのことやろ、ということで、モーテルでポリスの場所(警察署)を聞いて行く。
ポリスでは愛想の良さそうな姉ちゃんが出てきた。事情を説明すると、それはここではない、ドコソコへ行きなさい、
ビッグビルディングだからすぐわかるはず、とのこと。当局はポリスではなかったようだ。ビッグビルディングを
探して車で20分くらいウロウロするが見つからない。もう一度ポリスに戻り、ドコソコの詳しい場所をもう一度確認して
再度出発。今度は見つかった。あまりビッグではなく、見逃していた建物だ。どうやらドコソコはコート(裁判所)
のようだ。
コートの中に入り受付で用件を伝え、行くべき部屋を教えてもらう。通された部屋にいたおじさんに事情を説明し、
事故証明書を発行してもらう。おじさんの名前はCurt Brewer。交換した名刺にはDetective Sergeantとある
(刑事部長?よくわからない)。レスキュー部隊としても活躍しておられるらしく、部屋にはヘリコプターに乗っている
ような写真や、お子さんが書いたと思われるヘリコプターの絵が貼ってあった。とにかく、フレンドリーで親切な
おじさんでよかった。
これで一件落着かと思ったのもつかの間、大きな落とし穴があった。レンタカーの契約書をもう一度よく見てみると、
「車両保険の適用は、ウィンドシールド、タイヤ、車内備品は除く」とある。ウィンドシールドってもしや・・・、
ということでCurtおじさんに聞くと、「そうだ、フロントガラスのことだ」とのこと。がーん・・・。
「保険は出ないみたいだけど、とりあえずこの事故証明書は作っておくね」と言いながら、Curtおじさんは、
被害金額予想の欄に$1000と書き込んでいた。$1000かぁ、痛い、あまりに痛い。また$1000で済む保証もどこにもない。
キャディラックのフロントガラスだからなぁ。
10分ほどで事故証明書が完成。驚いたことにCurtおじさんは割れたフロントガラスも確認しない。
レンタカー屋に提出する分と、君が保管する分と言いながら、コピーを取ってくれ、封筒まで探してきて入れてくれた。
Curtおじさん、本当にいい人だ。お礼を言って、握手して別れる。
モアブの町を発つ前にカメラのフィルムを購入しておくことにする。スーパーマーケットでコダックのフィルムを
買おうとしていたら、お客のお年寄りが、お前は何でフジフィルムを買わないんだ、と言っていた。
なんでもええやないの、とうまく英語で言えないこともあり、ニコニコ笑顔で返す。ポップコーンも買って、
気を取り直してブライスキャニオンに出発だ。
モアブからブライスキャニオンまでは約200マイル(320km)、約5時間の行程となる。モアブを離れてしばらくすると
遠くに何か動くものが見える。貨物列車だ。何を運んでいるんだろう。車の方が断然早く、ぐんぐん追い越していく。
「この先ガソリンスタンドも休憩所も何もないよ」という警告が出ている。モアブの町でガソリンを満タンにしてきたので、
安心して先に進む。見渡す限り荒れ地。遠くに山々は見えるが、人工的なものはこの道路以外何もない。
ところどころ牛注意の標識があり、牛が草を食っている光景を見た。アメリカでは郊外に行くと道路沿いに牛を見ることが
多いが、いつどこで見ても牛は草を食っている。人家も何もないようなところで、この牛たちはいったい夜を
どう過ごすのだろうか、全くの放し飼いなのか。謎である。
制限速度時速75マイル、キャディラックくん、快調に走る。やはり高級車、いくら運転しても全く疲れない。
高級車の良さを実感する。このあたりは観光地でもなんでもない全く無名の土地ではあるが、ところどころで面白い形の岩、
山肌にはパステルカラーの美しい地層を見ることができる。2時間半ほど走ってキャピトルリーフ国立公園に到着。
このキャピトルリーフ国立公園、一応国立公園には指定されているが、今日までに訪れたグランドキャニオン、
アーチーズ、これから訪れるブライスキャニオン、ザイオンなどの国立公園に比べて、あまりに知名度が低いようである。
ちなみにモニュメントバレーは、ナバホインディアンが管理運営する公園なので国立公園ではないのだが、
知名度はそこそこある。
キャピトルリーフが「地球の歩き方」に紹介されているページも極端に少なく、とても影が薄い。一応トイレ休憩も
かねてビジターセンターを訪れる。岩の芸術ということであるが、まあいいだろうということで、
予定通り先を急ぐことにする。
キャピトルリーフを離れ、ブライスキャニオンに向かう途中から山道に入る。凍結が心配。
山を登るに従い左側の景色がだんだん広がっていく。おー、すごい。道の途中に設けてある展望台から眺める。
遠くに雪を頂いた峰々、眼下に広がる森林、ところどころに見える青い湖。感動。やっぱり冬の景色は最高だと
つくづく感じる。
道路には凍結している部分もあったが、なんとか通れるのでよかったと走っているとその時、前方に動く物体が・・・。
牛である。牛くん、数頭の群れ、車を見ても動じずのんきにこっちを見ている。悠々と横断。耳には番号札のようなものを
つけている。やっぱりちゃんと飼われているのは確かなようだ。これで鹿くん、牛くん、両方を見たことになる。
アメリカのドライブはこれだから楽しい。
日が暮れかけようとしている頃、ブライスキャニオンに到着。まだあたりは明るいので、取り急ぎサンセットポイントへ
向かうことにする。今日泊まるベストウェスタン・ルビースインの前を通り、国立公園に入ってサンセットポイントへ。
サンセットポイントでブライスキャニオンと初対面。ひょえー。なんじゃこの光景は・・・。言葉を無くす。
すごい、すごい。本では読んでいたし、写真でも見ていたが、実際にこの奇妙な風景を見ると、ただただ感心するばかり。
フードゥーと呼ばれる、色鮮やかな尖塔群。何でこんなものができたのか・・・。自然の偉大さをまたまた再認識。
暗くなってきたので宿に向かう。一泊$44でチェックインして、ロッジのレストランで夕食。本日ニューイヤーイヴの
パーティがあります云々というポスターが貼ってあった。そう言えば今日は大晦日。この旅行中、ところどころで
クリスマスの飾り付けを取り払わずにそのままにしてあるのを目にしたものの、年末の気配、お正月を迎える気配を
全く感じることがなかったことに気づく。隣のテーブルに座った赤ちゃんがかわいい。注目していたらそのお父さんが
喜んで赤ちゃんを近くまで連れてきてくれた。お店の店員さんも集まってきて、抱っこしたりしていた。
愛想のいい赤ちゃん、人気者だ。
部屋に入ると、ペコさんのいつものお仕事が始まる。洗面道具のセット、次の日に使うものの準備、荷物の詰め換え、
ビデオのバッテリーの充電、明日の服の準備、名付けてテキパキペコである。
明日の朝日を見るために、年末のカウントダウンをすることもなく、もちろん紅白も見ることもなく、就寝。
かくして1997年は終わる。