6日目:
感動!色鮮やかなブライスキャニオン!
ブライスキャニオン→マウントカーメルジャンクション (1998/1/1)
朝早起きして、チェックアウト。サンライズポイントで朝日を見る。初日の出なのだが、アメリカに居るせいか、
そういうあらたまった気分にはならない。尖塔群が日に照らされて、次第にその色を帯びていくのが美しい。
昨日の夕方からそうなのだが、ちょっと雲が多いのが残念。
ブライスキャニオンも、谷の縁(リム)から下を眺めるという意味ではグランドキャニオンと同じ。
グランドキャニオンが谷底に流れる川を挟んでほぼ対称の形になっていて南北側双方にリムがあるのに対し、
ブライスキャニオンのリムは片側、つまり自分たちが居る方だけ。眼下に尖塔群を見下ろし、正面には崖ではなく
遠くの山々を眺めることになる。
朝のうちに車で行けるポイントはとにかくすべて回っておこうと出発。ブライスポイント、ファービューポイント、
ヨビンパポイント、レインボーポイントなど、数々のポイントを回る。どのポイントから見てもずっと尖塔群が同じように
続いていて、景色にそれほど大きな違いはないのだが、どこから見ても感動の連続。それほどまでに見事な風景。
途中ナチュラルブリッジという穴のあいた岩、つまりアーチーズにあったようなアーチが見えるポイントもあった。
フェアリーランドポイントでは、沈む船という名の付いた岩壁もあり、風景にアクセントを加えていた。
昨日夕食をとったレストランでランチを食べて、谷底までのトレイルを歩くことにする。トレイルの出発地点まで
車で向かう途中でビジターセンターに寄るが元旦ということでお休み。仕方なく先を急ぐ。
と、突然、前から来た公園整備と思われる車が、ちょうどすれ違ったところでサイレンを鳴らし始め、
Uターンして追いかけて来た。何事かと思って止まると、中からおじさんが出てきて速度違反だと言っている。
一瞬ドキッとしたが、警告だけで済んだ。よいおじさんだ。感謝、感謝。公園内では制限速度は時速35マイルだと
いうことだが、道は広く整備も行き届いていて、一応山道ではあるが60マイルは簡単に出てしまう。
これから先は意識して安全運転を心がけよう。あとから読んだ本によると、アメリカの国立公園では、公園を管理する人
(パークレンジャー)が、警察権も持っているらしい。警告だけで許してくれたおじさんに改めて感謝。
ナバホループ・トレイルと名の付いたトレイルを歩くことにする。最初は急な坂道。道にはところどころ雪があったり
凍っていたり歩きにくいところもあるが、なんとか滑らずに谷を下りる。下から見上げると、ひとつひとつの尖塔の
大きさをあらためて実感することができる。また尖塔のパステルカラーと空の青が絶妙のコントラストを醸し出している。
細くて狭い谷底では、岩と岩の間を一本の杉の木が空に向かって伸びていた。1時間ほど歩くと道もほぼ平らになり、
谷底かと思われるところへ到着した。
グランドキャニオンを歩いた時は1時間半ほど歩いてもまだまだ下が続いていたが、そのことからもグランドキャニオンの
スケールがとてつもなく大きいのだということがわかる。景色の点ではこのブライスキャニオンも決してグランドキャニオンに
劣るようなものではない、いやあえて言うなら尖塔の形の異様さ、またその色の鮮やかさから、むしろブライスキャニオン
の方に軍配を上げたいくらいであるが、それでもグランドキャニオンがナイヤガラの滝と並んで世界級の観光地で
あり続けるのは、その規模の大きさによるものなのだろうと思う。
自然にできた今にも崩れそうな橋が二つ並んでいるダブルアーチ、その頂点の形が映画のETに似ている尖塔
(Thor's Hammer)もある。リムの上から見下ろすブライスキャニオンもすばらしかったが、下から見上げるとその魅力が
なお一層増す。
坂道を登ってリムまで戻ってくると、観光バスが到着している。日本からの団体さんのようだ。
トレイルを歩いてみるといいよと言いたいところではあったが、あまり時間がないのか、リムから見下ろすだけで帰って行く。
それだけでもすばらしい景色なんだけどね。
夕陽が沈む前に、今日の宿泊先、ザイオン国立公園の手前、マウントカーメルジャンクションのモーテル、
ベストウェスタン・サンダーバードへ向かう。1時間ほどで到着。これで3日連続のベストウェスタンである。
一泊$40。部屋の横はゴルフ場だ。モーテルに併設されているレストランで夕食をとる。アメリカの標準的なレストランと
いう感じで、予想した通りあまりおいしくはない。
ただこのレストランで感心なことがひとつあった。渡された請求書に最初から15%のチップが加算してあり、
それにははっきりと「もしサービスが気に入らなかったらチップの分は削ってもよい」という但し書きもあった。
何でも合理的なアメリカのシステムの中で、常々このチップだけはどうも納得がいかないと思っている。
どういう歴史的な経緯があったのかはよく知らないが、レストランで食事をした時はチップを支払うことになっている。
サービスに応じて支払えばよいということであるが、気持ちと財布の具合でいくらでもいいのかというと、
実際には食事代の15%から20%が標準とされている。もちろん払わずに済ますこともできるのだろうが、
アメリカ人に言わせると15%を支払うのが常識だとのこと。経済学の目から見たら、チップはゼロにするのが資本主義の
お客の行動原理ではないのか?その資本主義の最先端を行くアメリカで、なぜこんな非合理的な制度が残っているのか
理解できない。よく耳にすることとして、レストランで働くウェイター・ウェイトレスはもともと給料が低く、
チップがなければ生活ができないので払うのが礼儀という話がある。しかし、本来ウェイター・ウェイトレスの給料は、
チップを見込んで最初から低くしておかなければいけないような性質のものではないはずである。
また大きなレストランになると仕事が細分化されているが、注文を聞いて食事を運び食事代の勘定をするといった
ウェイター・ウェイトレスの立場は、食べた後のお皿を片づけたりテーブルをセットする人々の立場よりはずっと
高いはずであり、ウェイター・ウェイトレスへチップを払うのに、なぜお皿を片づける人に払わないのかという疑問に
対しても、適切な説明ができそうにない。
このレストランのように、すべての店で最初から15%を加算した料金とするようになれば、チップという非合理的な
制度がなくなっていくと思うのだが、いかがなものであろうか。海外からの観光客がたくさん来るようなサンフランシスコの
レストランなどでは取り損ね防止のために最初から店の方でチップを書き込んでいるケースもあるが、このレストランには
海外からの客はほとんど来そうにない。このレストランがチップ制度そのものへの疑問からこういうシステムにしているのか、
単に15%の計算が面倒なのでそれを手助けする意味でしているのか、よくわからなかったが、支払う時、お店のおやじさんに
「日本にはチップの制度がないからこちらのチップの習慣にはいつも難儀している、こういう風に最初から計算して
くれていると本当に助かる」と言うと、「そうだろう、そうだろう」と満足そうに喜んでいた。
そう言えば今日は元旦、お正月。全然お正月気分が盛り上がらぬまま、部屋に戻って就寝。