4日目:
グレイシャー国立公園、ゴーイング・トゥ・ザ・サンロードを走る
アムトラック下車→イーストグレイシャー→ウェストグレイシャー (1998/8/12)
明け方ペコが大笑いする声で目覚める。いったいどうしたんや。笑いつづけるペコ。どうやらすごく楽しい夢を見たらしい。
それならいいけど、ちょっと近所迷惑かも。
着替えてから、朝食を食べに、昨日の不快な男がいないことを念じつつ食堂車へ行く。途中のどこかの駅で乗務員は
交代しているのだろうと期待していたが、その考えは甘かったようで、あの男の姿を目にしてしまった。が、幸いにして、
案内された席は別のウェイターさんの担当だった。
テーブルで相席したご夫妻も楽しそうな方で、フレンドリーに食事を楽しむことができた。ミズーリー州の大学で
電気関係の助教授をしておられ、カリフォルニアに遊びに行った帰りだということだった。
グレイシャー国立公園に行くと言ったところ、何年か前に行ったけど、良いところだよと言ってくれた。
列車は朝9時42分(時差一時間)に到着の予定だが、ずいぶん遅れているようだ。森の中、時には川に沿って、
時には田舎町を通って、列車は進む。食事の後、展望車にも行ってみる。全面ガラス張りの窓になっていて、
少し汚れているが、眺めは最高。
展望車で外を眺めていたら幼い女の子ふたりが足元に寝転んで塗り絵を始めた。その子達は金髪で、
英語をしゃべっていたので、「何でこんな狭いところに寝転んでるんやろ」とか、「そこにそんな色を塗ったらおかしいで」
とか、こちらも油断して勝手なことを言っていたら、となりに座っていた東洋系のお姉さんが、「マユちゃん、行くよ」と
言って幼い方の子を連れていった。マユちゃんはどうやらバイリンガルのようだ。教訓。日本語が通じないと思っても、
人前で不用意なことを言うべからず。
電気系統の故障ということで、途中Whitefishで長い間停車した。アムトラックは遅れるものと聞いていたが、
本当に遅れている。2時間ほど到着が遅くなるようだが、特に急ぐ理由があるわけでもなく、眺めのよい列車に乗って、
朝がゆっくりできたので、決して悪い気はしない。
West Glacierの駅を過ぎ、大陸分水嶺(Marias Pass)、ルーズベルト大統領の記念碑を越えて、ようやく
グレイシャー国立公園の玄関口、イーストグレイシャーパーク駅に到着。荷物を持って降りる。
列車は駅に長い間停車している。名残を惜しんで、しばらく列車と一緒に記念撮影をしたり、待合室に出たり入ったりして
過ごす。
そろそろ列車が動き出しそうな気配になってきたころ、列車の最後尾のデッキから乗客のお兄さんがぼくを呼ぶ。
行ってみると、手を伸ばして「新聞を買ってくれぇ」と¢75を渡す。見るとすぐ側に新聞の販売機があるので、
急いで買う。列車は出発しそうになっているのであわてて機械にお金を入れ、中に入っていた新聞を取り出し、
お兄さんに手渡した。間一髪なんとか間に合った。列車はスピードを上げて遠ざかっていった。
AVISのレンタカーの看板を探すが見つからない。周りの人に聞くと、駅前のコンビニがレンタカー屋を兼ねているという。
線路の上を横切って、コンビニへ行き、レンタカーを借りる(Avisレンタカー、一日$68)。一日100マイルを越えると
追加費用がかかるという。またこの車の返却はカリスペルの空港になるのだが、その乗り捨て料金が$45かかる。
結構高い。都会で借りるレンタカーはいつも新しいが、ここの車はちょっと古い。
ガードをくぐって、まずは駅のすぐ前にあるグレイシャーパークロッジへ行く。庭にはスプリンクラーが涼しそうに
回っている。ロビーに大きな白いヤギの剥製があり、われわれを歓迎してくれている。「このマウンテンゴートに
会いたいのよね」とペコさん。ロッジの中のレストランで昼食をとる。バフェ形式で、サンドイッチを自分で作って食べるが、
あまりおいしくなかった。デザートでとってきた大きなケーキも、いかにもアメリカっぽく甘かった。
しかもバフェの料金に含まれていると思っていたのに、しっかり別料金をとられた。雰囲気は悪くないのだが、
アメリカの田舎町ではこんなものかとあきらめる。
いよいよグレイシャー国立公園へ入り、トゥーメディスン・レイクへ車を走らせる。
左手に湖(Lower Two Medicine Lake)を見ながら高原の道を走る。観光用と思われる、少し小さく真っ赤なバスが
前を走っている。グレイシャー国立公園の名物バスのようだ。なかなか可愛い。しばらく行くと、
別の湖(Two Medicine Lake)の船着き場に到着。駐車場に車を停める。済んだ空気の中、きらめく湖と、緑の山々、
青い空がたいへん美しい。
船の出発は2時30分。土産物屋さんで待っている間、20人くらいの陽気な団体さんから、写真を撮ってほしいと
声を掛けられ、カメラを渡された。湖をバックに全員の写真を撮ったところ、次から次へとカメラを渡され、
何度もシャッターを押すことになった。みんな笑顔でいろいろ言ってくれるのだが、こちらは笑顔で返すのが精一杯で、
英語で気の利いたことが言えないのがちょっと悔しい。
桟橋に着いた船に乗って出発する。さっそく船長さんのアナウンスがあり、今日はクマが出るということで
トゥイン・フォールズへのトレイルが閉鎖されているという。トゥイン・フォールズへ行けないのはショックだが、
他にもトレイルがあり、帰りに船に乗らずにトレイルを歩いて戻ってきたら船代は片道の$4だけでよいという。
片道$4、往復$8。船長さんに、「そのトレイルは良いか?」と聞くと、「Very Good!」の返事。
何が「Very Good!」なのかよくわからないが、とにかくその返事を信じて、帰りは湖の南側を通るトレイルを歩いて
帰ってくることにする。船内で船賃を支払いする。
湖面を船は進む。あたりは山に囲まれて、自然の中にいることを実感する。船内にいたアメリカ人の子供が
白いヤギのぬいぐるみを持っている。とてもかわいい。ペコさんがそれに目をつける。30分ほどで対岸に到着。
船から降りて、すぐそばで湖水を見ると、見事なまでに透き通っているのがわかる。
船長さんに薦められたトレイルを歩く。茂みの中でクマと出くわさないように、歌を歌って進もうということで、
ぺこさんが歌い出した。「あるぅ日ぃ♪森の中♪・・・」。おいおい、クマさんに出会っちゃー、まずいでしょう。(^^)
途中川を渡るとき、足場が無くて困っていると、親切な親子連れが助けてくれた。その中のお母さんが日本語が
ほんの少し話せるようだった。道が分かれているところで進むべき方向も教えてくれた。トレイルは、薮の中を通ったり、
川を渡ったり、変化はあるのだが、茂みが深くて、湖が見渡せたのは最初の方だけだ。果たして船長さんの「Very Good!」は
何だったのか。
トレイルも後半に入り、川のほとりで休憩をしてから出発。するとトレイルの前方に何か小さなものがたたずんでいる。
ウサギだ。これはVery Goodかもしれない。カメラを望遠にして覗いて見ると、よくわかる。しばらくにらめっこを
していると、逃げて行った。その後少し歩いていると、何かのトレーニングなのか、トレイルを猛スピードで走っている人
たちに追い抜かれていった。4時50分頃、元の船乗り場に到着。
アイスティーを飲んで一服してから出発。今日の宿泊場所、ウェスト・グレイシャーへ向かう。
明日明後日と宿泊するセント・メリーを通り、国立公園のゲートから、ゴーイング・トゥ・ザ・サンロードへ入る。
左手に湖(セントメリーレイク)を見ながら、高原のドライブウェイを走る。「地球の歩き方」に紹介されていた
「撮影にいいポイント」に車を停め、Wild Goose Islandを眺める。夕陽がまぶしい。
山道をどんどん登り、ローガンパスに到着。あたり一面、雄大な高山の風景。たいへん美しい。
時間が遅くビジターセンターは閉まっている。周りの茂みにはリスがいっぱいいる。
このリスをマーモットだと思いこんで、マーモット、マーモットと呼びかけていたが、
後日これが間違いだったことがわかる。ビジターセンターの周囲にある散歩道を歩く。高原植物が美しい。
ヒディン・レイクへのトレイルに行こうかと思ったが、このトレイルもクマのため閉鎖しているという看板があり、
行くのをあきらめる。
駐車場に停まっている車の助手席に大きなくまのぬいぐるみがシートベルトをして座っている。
ユニークで思わず笑ってしまう。車を出発させる。ローガンパスの駐車場を出てすぐのところに大陸分水嶺の標識がある。
そこから長い下り坂、雄大な景色が続く。岩壁を水が滴るウィーピング・ウォールを過ぎ、延々と下る。
レイクマクドナルドを通り、ウェスト・グレイシャーに8時30分頃到着。あたりはかなり薄暗くなっている。
West Glacier Motel(TEL 406-888-5662)にチェックイン。一泊$59。氷がアイスボックスに入って管理人室の前に
置いてあり、自由に取りにいけばよいとのこと。また部屋のカギは明日の朝、管理人室のポストに放りこんでおけば
よいそうだ。
ウェストグレイシャーはちょっと蒸し暑い。日本の夏はもっと蒸し暑いのだろうが、サンノゼの快適な気候に慣れた今では、
このような蒸し暑さもつらく感じる。夕食はロッジの前にあるレストランで、スパゲッティとサラダを食べる。
店には日本人のお客さんもいた。まずまずおいしかった。
食後、会社に電話を入れようと公衆電話のあるところまで歩く。3台ほど電話機があったが、どこも人が使っていて満員。
しかも誰もなかなか終わろうとしない。10分ほどたってようやく一台の電話機が空いたが、通話料金がサンノゼまで
一回$3もするという。国際通話をはじめ何でも自由化が進んでいて安いアメリカなのに、国内通話で一回
(例え1秒で終わっても)$3とは、信じがたい。財布を見るとお札が少し入っているだけで硬貨が十分になく
(普通、硬貨を$3持っていることのほうが珍しいと思うが・・・)、クレジットカードによる通話もVISAカードでは
使えないようなので、レストランでお札を両替してもらう。$5札を¢25硬貨に替えてもらうようにお願いしたのだが、
レストランでもおつりのために硬貨が要るということで、$3分しか替えてもらえなかった。結局、会社に電話をしても
誰も出ず、また留守番電話にもつながらず、すべては徒労に終わる。$3は助かったけど。。
その後モーテルに帰る前に近くのお店で明日の朝食を仕入れる。夜10時に閉まるらしく、電気が消え、もう終わる
雰囲気になっている。急いでドーナツやビスケット、バナナ、オレンジジュースなどをかごに入れてレジに並ぶ。
ここで問題発覚。このお店ではクレジットカードが使えないようだ。仕方なく持っている小銭を全部レジの前に広げて数え、
値段の張るドーナツを買わないことにして、その場を乗り切る。
モーテルに帰って寝る支度。特に不便はないのだが、部屋にはクーラーも、電話も、テレビもない。
たまにはこういうのもよいかもしれない。