2日目その1:
迫力!噴き出すガイザー!
グラントヴィレッジ→ウェストサム→オールドフェイスフル (1998/5/24その1)
朝6時半に起床。はたして雨は降っているだろうか?カーテンを開けてみる。モヤが出ていてわかりにくいが、
大雨が降っているということはなさそう。着替えて外に出る。幸い雨は降っていないが、どんよりしている。
道のまわりにはまだ雪が残っている。
5分ほど歩いて、イエローストーン・レイクの湖畔のレストランに行って朝食をとる。
フレンチトースト、スクランブルエッグ、オレンジジュースにコーヒー、全部で$11.41。
今はモヤが出ていてあまり見晴らしはよくないが、湖側は全面ガラス張りになっている。
イエローストーン・レイクは琵琶湖の半分くらいの大きさだそうだ。
湖面に小さい水鳥が泳いでいる。ビデオカメラで追いかけていたら、突然姿が消えた。水に潜る鳥を発見!
どこだどこだと探していたら、数秒後、十数メーターも離れたところから顔を見せた。
その後少し歩いてグラントヴィレッジのビジターセンターへ行く。8時のオープンまでしばらく時間があるので
周りを散歩する。茂みにリスがいた。すばしっこい。8時ちょうどにビジターセンターに一番乗り。
May I help you? レンジャーのお姉さんが明るく声をかけてくれる。「動物を見たい」、「特にムースを是非見たい」、
また「昨日何度かシカを見たがその種類は何だったのだろうか」とか、いろいろ聞いてみたところ、地図を持ってきて、
笑顔で親切に教えてくれた。
昨日のおじさんが教えてくれた通り、ムースはイエローストーンではなくグランドティトン国立公園に行った方が
たくさんいて、会えるチャンスが多いようだ。また、昨日見たのはエルクだと思われるが、もしかするとミュール鹿
かもしれないとのこと。写真を見せてもらっても、素人には昨日見たものがそのどちらなのかよくわからない。
一番うれしかったのは、天気はこれから良くなっていくということだ。よし、いいぞ。
イエローストーン国立公園の南側に隣接するグランドティトン国立公園は、山の風景がきれいなことで有名だ。
今回の旅行は2泊3日で、イエローストーンだけでも時間が足りないようで、グランドティトンはどうしようか
迷っていたのだが、ムースを見に行くということで、明日はグランドティトンに行くことに決める。
ビジターセンターには、1988年7月にイエローストーンに発生した大規模な山火事のことを伝える資料の展示があった。
そう言えば昨日も、道の左右に広がる森の中には燃えた木が黒焦げになったままのようなところもあった。
アメリカの国立公園では、山火事が発生しても消火活動をしないということだ。以前は山火事が起こると、
一大事ということで必死で消火活動をしていたようだが、その後植物にとって山火事も必要なもののだということが
わかってきて以来、自然発生する山火事については消化活動をしないという方針になったということだ。
イエローストーンの森林の8割を占めるロッジポール松の松ぼっくりの中には、山火事で熱せられたときのみ
松ヤニが溶けて実がはじかれ芽を吹かせるものもあるということで、まさに山火事も大自然の摂理に従っていると
言えるわけだ。山火事が発生しても、ほとんどの動物は無事に逃げることができるということを知って、一安心する。
親切なレンジャーのお姉さんにお礼を言ってビジターセンターを出る。ロッジに戻って荷物をまとめ、
フロントで支払いを済ませ、いざ出発。フロントのお姉さんにお願いして、
今日泊まるホテルのレストラン(レイク・イエローストーン・ホテル&キャビンズ)に電話をかけ、
夕食を予約しておいてもらった。
すぐ近くにあったガソリンスタンドで、ガソリンを補給する。お姉さんが車の窓を拭いてくれた。
日本では普通の光景だが、アメリカのガソリンスタンドはたいていセルフサービスになっているので、
こういうサービスは良く考えたらアメリカに来て初めてだ。でも残念なことに、車の窓は今朝出発前に、
車内からのビデオの映りを考えてピカピカに磨いたばっかりだったので、かえって汚れてしまった。
お姉さんに悪気はないので許す。
まずは、ビジターセンターで薦めてもらった、ウェスト・サムにあるガイザー・ベイスンという湖畔の温泉プール群に行く。
駐車場に着いたら後から中国人の団体さんが観光バスでやって来た。
駐車場の横の空き地にもシカが何頭かいて草を食べている。
池(プール)の中から温泉が湧き出し、イエローストーン・レイクに流れ込んでいる。
池の周り、お湯が流れる川床は、黄色、オレンジ、赤など、鮮やかに色付いている。
鉱物や藻、バクテリアの影響でこういうきれいな色になるそうだ。お湯も透き通るように中の方まで見える。
アメリカのチビッ子もぶくぶく噴き出す温泉を見て、スゲーというようなことを言ってはしゃいでいた。
次は間欠泉(ガイザー)の噴き出す一帯、オールドフェイスフルへ向かう。
途中に大陸分水嶺(Continental Divide)の看板があった。ここから西側に降った雨はミシシッピ川となって
メキシコ湾に注ぎ、東側に降った雨はコロンビア川となって太平洋に注ぐという、水にとっての運命の分かれ道だ。
日本ではたいてい分水嶺は行政区の境目になっていて、分水嶺を越えると行政区が変わるものだが、
アメリカでは州の境を地形ではなく経度緯度でばっさり分けているところが多く、大陸分水嶺であっても、
その両側とも同じワイオミング州だということだ。
オールドフェイスフルに到着。草原ではバイソンやシカが悠然と草を食べている。
そのまわりには温泉がモクモクと湯気をたて、川が流れ、きれいな山並みが続いている。
なんとものどかで、雄大な景色だ。オールドフェイスフル・インの前に車を停める。
駐車場の周りにもシカがたくさんいる。
早速オールドフェイスフルのビジターセンターへ行く。ガイザーはこの地域だけでも何十とあるようだが、
そのうち主要な6つほどのガイザーについて、噴き出す予想時刻とその継続時間が掲示板に貼り出してあったので、
それを書き込んで、計画を練る。もっとも、噴出の間隔はたいていどこも数時間にもなるため、
われわれが滞在中に見ることができそうなものは限られている。
まずはイエローストーンで最もポピュラーな、オールドフェイスフル・ガイザーを見ることにする。
噴出の間隔は45〜110分、平均79分、噴出の継続時間は1.5〜5分、その高さは106〜184フィート(30〜55メーター)にも
なるそうだ。木で出来た桟橋のような通路に観客席が設置されているので、そこに座って噴出を待つ。
ビジターセンターの掲示板には、予想時刻は12時48分の前後10分となっていた。
その予想時刻が近づいてきて、緊張が高まる。ボ、ゴボゴボ、ゴボゴボと出ていた温泉が、Here we go! という兄ちゃんの
掛け声が後ろの方から聞こえるや否や、ジョ、ジョ、ジョー、ジョー、ジュワー、ジュワー、ジャーーー、ドヒャー!と
一気に噴き出した。なかなか見事なものだ。必死でビデオを回す。
背景の空が曇っていて、雲の白と温泉の白の区別がつきにくいのが、何とも残念。
それでも心配していた雨じゃないのだから、よしと思うことにしよう。
噴出が終わり、トレイルに出発する。最初、山に登ってこのオールドフェイスフルを見下ろす高台の
ビューポイントに行こうとしていたが、山に登るトレイルの入り口に「シカが出産したてで気が立っているため
トレイル閉鎖中」という看板が立っていた。こういう理由なら仕方が無い。コースを変更して、
最も美しい温泉プールのひとつと言われているモーニンググローリー・プールを最終目的地として、
往復2時間くらいの予定でこの温泉郷、アッパーガイザー・ベイスンを歩くことにする。
天気もだんだん良くなってきて、青空も顔を見せるようになった。川(ファイアーホール・リバー)が流れ、
遠くの方ではシカやバイソンが草を食べている。色鮮やかな温泉プール、ボッコボッコ音を立てて湧き出す温泉、
勢いよく音を立てて絶え間なく噴き出している温泉など、さまざまな見所がトレイルの両側に続いている。
そのひとつひとつにアネモネ・ガイザーとかビーハイブ(蜂の巣)・ガイザー、リバティ・プール、ソーミル(製材所)・
ガイザー、ビューティー・プール、オブロング(長円)・ガイザーといった名前が付いている。
道を外れて温泉に降りていくような不心得者はあまりいないのか、トレイルには柵はない。
時折、リスがチョロチョロと姿を見せる。
1時間も歩いたかどうか、ようやくモーニンググローリー・プールに到着。モーニンググローリーとは朝顔の意味。
確かに、朝顔のような形をしている。お湯は透き通り、色は鮮やか、本当に美しい。
それでも池のほとりにあった立て看板によると、池の底にはコインや空き缶などのゴミがたくさん捨てられていて、
温泉の出口がふさがれてしまうので、毎年1回掃除機で吸い出しているということだ。
アメリカの観光地ではそういう心無い行為の現場はあまり見たことはないが、心得の悪いヤツはいるということだ。
モーニンググローリー・プールで折り返し、別のトレイルでオールドフェイスフルに戻る。
サイクリングをしている人も多い。途中で、噴出予想時間が近いデイジー・ガイザーを見ることにする。
噴出を待つ間、パンチボウル・スプリングスに行く。このあたりの森も、山火事で燃えたのか、黒焦げになっている。
ずいぶんひどい火だったに違いない。
ビジターセンターの掲示板にあった予想時刻では、デイジー・ガイザーの噴出は午後1時55分の前後15分となっていた。
1時35分くらいからずっと待っているのだが、他に誰も来ない。1時55分になり緊張が高まるが、観客は数名。
本当に噴出するんだろうかと、少々不安になりつつ待つ。そのうち徐々に人が集まってきた。レンジャーのお兄さんも、
バイク(日本語でいう自転車)でやって来た。噴出状況の調査をするのだろうか。
お兄さん、サングラスが決まってシブイ。お客の質問に答えて、いろいろ説明をし始めた。
それにしてもアメリカの国立公園で働くレンジャーは、いつも明るく親切で本当に素晴らしい。
でも良く考えてみたらレンジャーだけではなくて、アメリカでは町のレストランでもお店でも、
たいていの店員さんはフレンドリーで気持ちがいい。そういう点は多いに見習わなければいけないことだと思う。
そうこうするうち温泉がボコボコ湧き出し、しばらくすると一気に噴き出した。すごいすごい。
高さは75フィート(約23メーター)ぐらいなので、オールドフェイスフル・ガイザーよりも小さいはずなのだが、
見ている距離が近いせいもあるのか、こっちの方が迫力があるような気がする。バックには青空も見えて、
温泉の白と空の青のコントラストが美しい。長く待った甲斐があった。
オレンジ・スプリング、キャッスル・ガイザーなどを見ながら、オールドフェイスフルへ戻る。
草原では、朝にはたくさんいたバイソンが、昼になって姿を見せなくなった。暑さに弱いのか、
日中は山へ帰って行くようだ。
オールドフェイスフルへ戻ってきたら、立派な角を持つ大きな雄シカがいた。これはエルクだろう。
ペコさんエキサイティング。人もいっぱい集まってきた。ところが、エルクの方は全く気にも留めない感じで、
平然と草を食べている。どんどんこっちの方に歩いてきて、近くまで来て座った。これはなんていうのか、
人に馴れているというのではない。人のことは何にも気にしていない、とでも言おうか。
今までイエローストーンを守ってきた人々の努力の証しだと思う。手厚く保護してきたというわけでもなく、
あくまで自然に、相手のことを尊重する。人間と動物の間にこういう付き合い方もあるのだということがわかり、
感銘を受けた。
オールドフェイスフル・ガイザーの方を見ると、観客がたくさん集まっている。最後にもう一度噴出を見ることが
できそうだ。急いで見に行く。席に座ってしばらく待ってもなかなか噴き出さない。
ビジターセンターもすぐ近くにあるので、予想時刻を見に行くことができそうだが、
行っている間に噴き出してしまうと元も子もなくなる。ということで周りの人に時間を聞いてみたところ、
驚いたことに誰も時間を知らない。ビジターセンターに時間が掲示してあることすら知らないようだった。
これがアメリカのおおらかさと言えるのか。もしこれが日本だったら、みんなが噴き出す時間を知らずに
気長に待つなんてことはないだろうと思う。時間通りにコトを運ぶ、時間を大切にする、時間に追われる、時間に縛られる、
こういうことは日本人の得意技(悲しい習性?)なのかと改めて感じた。
2度目の噴出は、1度目よりも高く、迫力があったような気がした。
オールドフェイスフル・インの前の駐車場に戻ると、そこでもシカが草を食べている。
と、なんと、そのシカの写真を撮っていたアジア系の姉ちゃんが、シカの顔を自分の方に向かせたいのか、
シカに石を投げ始めた。ちょっと、あんた、いったいなにすんの!今までそんなことをしないように付き合ってきたから、
今こうやってシカがそばまで来てくれるようになったんとちゃうの!ええかげんにせい!
お昼の時間はとっくに過ぎている。オールドフェイスフル・インの中で食事をしようと中に入ったが、
混んでいたので断念。ここを去る前に世界最大の丸太小屋と言われる建物の中を階段で3階まで上がってみる。
確かに大きい建物だ。昼食は近くにあるみやげもの屋さんの中のハンバーガーショップでハンバーガーと
サンドウィッチを食べる。ベーコンがカリカリしておいしい。追加のフィルムを買って、次の目的地に向かって出発!